フィギュアスケーターの浅田真央さんを応援するブログ
1位 A.ソトニコワ 224.59点(フリー149.95、技術点75.54、演技構成点74.41)
2位 キム・ヨナ 219.11点(フリー144.19、技術点69.69、演技構成点74.50)
3位 K.コストナー 216.73点(フリー142.61、技術点68.84、演技構成点73.77)
6位 浅田真央 198.22点(フリー142.71、技術点73.03、演技構成点69.68)
競技結果
得点詳細
ジャッジスコア
昨日とは別人のような演技でした。
最初のトリプルアクセルに成功すると、次々とすべてのジャンプを決めました。
2つの回転不足や滑走順が早いことから得点が抑えられましたが、
フリーの自己ベストを更新。
逆境の中の素晴らしい演技に感動しました。
最後に見せた涙は昨日の悔しさと、フリーで思い通りの演技ができた喜びでしょうか?
真央ちゃん、ありがとう。
2位 キム・ヨナ 219.11点(フリー144.19、技術点69.69、演技構成点74.50)
3位 K.コストナー 216.73点(フリー142.61、技術点68.84、演技構成点73.77)
6位 浅田真央 198.22点(フリー142.71、技術点73.03、演技構成点69.68)
競技結果
得点詳細
ジャッジスコア
昨日とは別人のような演技でした。
最初のトリプルアクセルに成功すると、次々とすべてのジャンプを決めました。
2つの回転不足や滑走順が早いことから得点が抑えられましたが、
フリーの自己ベストを更新。
逆境の中の素晴らしい演技に感動しました。
最後に見せた涙は昨日の悔しさと、フリーで思い通りの演技ができた喜びでしょうか?
真央ちゃん、ありがとう。
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【SP16位で笑顔を失った浅田真央。滑走前、彼女に見えていたものとは。】
スタートのポジションにつく前、少し上を見上げた。あのとき、何を観たのだろうか。何を思っていたのだろうか。
2月19日、フィギュアスケート女子ショートプログラム。
最終滑走の浅田真央は、滑り終えたあと、うつむいた。観客席に向けての礼でも、笑顔を浮かべることはなかった。
冒頭のトリプルアクセルで転倒し、トリプルフリップは回転不足の判定。3つ目のジャンプとして予定していたトリプルループ-ダブルループのコンビネーションジャンプも成功させることはできなかった。
結果は、55.51点の16位。自己ベストを20点以上下回った得点、シニアに転向後のグランプリシリーズ、世界選手権そしてオリンピックでもなかった順位。
「自分の思っているような演技が全然できませんでした」
「最初のトリプルアクセルから、『いつもと違う』と思ってしまいました」
「リンクに入ってからは落ち着いていたんですけど、滑り出してちょっと違うな、と」
試合後の取材では、沈痛な言葉が続いた。
【2度目の五輪が、1度目より簡単なわけではない】
何が「いつもと違う」と感じる要因となったのか。
自身、思いもよらない演技に終わったショックも大きかったろう。しかも終わったばかりだ。簡単に分析できるわけもない。
その中にあって、浅田は言った。
「(緊張は)団体戦のときから感じていて、自分の中で克服していくつもりでしたが、できませんでした」
その内容や度合いはどうあれ、緊張に苛まれていたことをうかがわせた。
バンクーバーに続く2度目のオリンピックである。一度経験している大舞台だ。ただし、経験しているから対処しやすいというわけでもない。大舞台であることを知ってしまったからこそ生まれる難しさもある。例えばフリースタイルスキーの上村愛子は、初めて出場した地元長野での大会よりも、2度目のソルトレイクシティ五輪でプレッシャーに苦しんだと言ったことがある。一度知ったことで、大会の大きさ、重みを把握する。把握するからこそ、かまえてしまう。
【鈴木は8位、村上は15位での折り返しとなった】
あるいは、懸ける思いの大きさかもしれない。いずれにせよ、2度目だからこそ難しいということはあり得るのだ。
浅田もそうだったとは断言はできない。ただ、おそらくは体調や仕上がりから来るものではなかったのではないか。事態を消化しきれないでいる浅田の様子にそう思えた。何にせよ今は、いたずらに断言することはできない。
鈴木明子は最初のトリプルトウループ-トリプルトウループが決まらず8位。両足の小指を痛めていたという。
「今はだいぶよくなっていますけれど、練習が積めていなかったので、不安がありました」
と、涙にくれた。
15位での折り返しとなった村上佳菜子も涙を流した。
滑り出しから、調子がよさそうに思えた。だが、トリプルフリップが1回転になる失敗。
「調子がよかったので、悔しいです。飛ぶ前にすごく考えてしまいました」
と、ただ悔しさを見せた。
【上位を占めたコストナー、ソトニコワ、ヨナ】
万全な滑りを見せられなかった日本の3選手に対し、ショートを滑った選手の中で、もっとも強い印象を残したのは、カロリナ・コストナー(イタリア)だった。最初のコンビネーションジャンプを、団体戦のトリプルトウーループ-トリプルトウループからトリプルフリップとトリプルトウループに変更。これを成功させると、あとはただただ、観る者を魅了するばかりだった。
「(ジャンプの変更は)コーチにも言っていませんでした。選択を任せてくれたコーチに感謝しているし、できるというところを見せたかったんです」
と笑ったコストナーは、こうも語った。
「私のためのスケートではなく、皆さんと共有したいと思っていました」
5コンポーネンツでトップの評価を得るなどしての3位だったが、その順位以上に、コストナーの思いが成就した、会心の演技ではなかったか。
2位には、地元ロシアのアデリナ・ソトニコワ。大きな期待を集めていたユリア・リプニツカヤ(ロシア)がジャンプのミスで5位にとどまったのと対照的に、注目度という点で高くなかったのが幸いだったかもしれない。思い切りのいい、ノーミスの演技に、思わずロシアの記者たちから拍手が湧き起こった。
圧巻の演技を見せたコストナーらを抑えて首位に立ったのは、キム・ヨナ(韓国)。
【3人はそれぞれに気持ちを切り替え、フリーへ】
ショートプログラムは終わり、明日20日にフリーを迎える。上位の3名はそろって74点台の僅差だ。熾烈な争いとなるだろう。
そして日本の3人の選手は、巻き返しを図る場となる。
「最後は気持ちよく終わりたいです」
涙ながら笑顔で言った鈴木。
村上はこう語った。
「今日の悔しさを忘れるくらいの、迫力のあるすごい演技をしたいです」
そして浅田。
「自分のやるべきことをしたいと思います」
フリーでは、やりたいことに、思い切って挑んでほしい。
3人はそれぞれに気持ちを切り替え、フリーを迎えようとしている。
(「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文)
Number Web 2月20日(木)16時31分配信
スタートのポジションにつく前、少し上を見上げた。あのとき、何を観たのだろうか。何を思っていたのだろうか。
2月19日、フィギュアスケート女子ショートプログラム。
最終滑走の浅田真央は、滑り終えたあと、うつむいた。観客席に向けての礼でも、笑顔を浮かべることはなかった。
冒頭のトリプルアクセルで転倒し、トリプルフリップは回転不足の判定。3つ目のジャンプとして予定していたトリプルループ-ダブルループのコンビネーションジャンプも成功させることはできなかった。
結果は、55.51点の16位。自己ベストを20点以上下回った得点、シニアに転向後のグランプリシリーズ、世界選手権そしてオリンピックでもなかった順位。
「自分の思っているような演技が全然できませんでした」
「最初のトリプルアクセルから、『いつもと違う』と思ってしまいました」
「リンクに入ってからは落ち着いていたんですけど、滑り出してちょっと違うな、と」
試合後の取材では、沈痛な言葉が続いた。
【2度目の五輪が、1度目より簡単なわけではない】
何が「いつもと違う」と感じる要因となったのか。
自身、思いもよらない演技に終わったショックも大きかったろう。しかも終わったばかりだ。簡単に分析できるわけもない。
その中にあって、浅田は言った。
「(緊張は)団体戦のときから感じていて、自分の中で克服していくつもりでしたが、できませんでした」
その内容や度合いはどうあれ、緊張に苛まれていたことをうかがわせた。
バンクーバーに続く2度目のオリンピックである。一度経験している大舞台だ。ただし、経験しているから対処しやすいというわけでもない。大舞台であることを知ってしまったからこそ生まれる難しさもある。例えばフリースタイルスキーの上村愛子は、初めて出場した地元長野での大会よりも、2度目のソルトレイクシティ五輪でプレッシャーに苦しんだと言ったことがある。一度知ったことで、大会の大きさ、重みを把握する。把握するからこそ、かまえてしまう。
【鈴木は8位、村上は15位での折り返しとなった】
あるいは、懸ける思いの大きさかもしれない。いずれにせよ、2度目だからこそ難しいということはあり得るのだ。
浅田もそうだったとは断言はできない。ただ、おそらくは体調や仕上がりから来るものではなかったのではないか。事態を消化しきれないでいる浅田の様子にそう思えた。何にせよ今は、いたずらに断言することはできない。
鈴木明子は最初のトリプルトウループ-トリプルトウループが決まらず8位。両足の小指を痛めていたという。
「今はだいぶよくなっていますけれど、練習が積めていなかったので、不安がありました」
と、涙にくれた。
15位での折り返しとなった村上佳菜子も涙を流した。
滑り出しから、調子がよさそうに思えた。だが、トリプルフリップが1回転になる失敗。
「調子がよかったので、悔しいです。飛ぶ前にすごく考えてしまいました」
と、ただ悔しさを見せた。
【上位を占めたコストナー、ソトニコワ、ヨナ】
万全な滑りを見せられなかった日本の3選手に対し、ショートを滑った選手の中で、もっとも強い印象を残したのは、カロリナ・コストナー(イタリア)だった。最初のコンビネーションジャンプを、団体戦のトリプルトウーループ-トリプルトウループからトリプルフリップとトリプルトウループに変更。これを成功させると、あとはただただ、観る者を魅了するばかりだった。
「(ジャンプの変更は)コーチにも言っていませんでした。選択を任せてくれたコーチに感謝しているし、できるというところを見せたかったんです」
と笑ったコストナーは、こうも語った。
「私のためのスケートではなく、皆さんと共有したいと思っていました」
5コンポーネンツでトップの評価を得るなどしての3位だったが、その順位以上に、コストナーの思いが成就した、会心の演技ではなかったか。
2位には、地元ロシアのアデリナ・ソトニコワ。大きな期待を集めていたユリア・リプニツカヤ(ロシア)がジャンプのミスで5位にとどまったのと対照的に、注目度という点で高くなかったのが幸いだったかもしれない。思い切りのいい、ノーミスの演技に、思わずロシアの記者たちから拍手が湧き起こった。
圧巻の演技を見せたコストナーらを抑えて首位に立ったのは、キム・ヨナ(韓国)。
【3人はそれぞれに気持ちを切り替え、フリーへ】
ショートプログラムは終わり、明日20日にフリーを迎える。上位の3名はそろって74点台の僅差だ。熾烈な争いとなるだろう。
そして日本の3人の選手は、巻き返しを図る場となる。
「最後は気持ちよく終わりたいです」
涙ながら笑顔で言った鈴木。
村上はこう語った。
「今日の悔しさを忘れるくらいの、迫力のあるすごい演技をしたいです」
そして浅田。
「自分のやるべきことをしたいと思います」
フリーでは、やりたいことに、思い切って挑んでほしい。
3人はそれぞれに気持ちを切り替え、フリーを迎えようとしている。
(「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文)
Number Web 2月20日(木)16時31分配信
【3つのジャンプをすべてミス】
ソチ五輪フィギュアスケート女子のショートプログラム(SP)が現地時間19日に行われ、浅田真央(中京大学)はトリプルアクセルで転倒するなど3種類のジャンプすべてにミスが出て、55.51点の16位発進となった。
予想だにしなかった展開に浅田の顔は曇った。「自分の思っているような演技が全然できなくて……気持ちは前に行こうとしていたんですけど、体がついてきませんでした」。直前に滑ったアデリナ・ソトニコワ(ロシア)が出した74.64点というハイスコアに会場が沸き上がる中、最終滑走で登場した浅田は、冒頭のトリプルアクセルで転倒。続くトリプルフリップでは回転不足をとられ、コンビネーションジャンプはダブルループとなるミスを犯してしまった。出来栄え点を表すGOEもジャンプは全てにマイナス評価がついた。
直前の6分間練習ではトリプルアクセルを成功するなど状態は決して悪くなかった。しかし本番を迎えると一変。「何が起こったか分からない」と、ちぐはぐな滑りに終始し、得点の発表を待っている間は放心状態だった。
「リンクに入ってからは落ち着いていたんですけど、滑りだしてからちょっと違うなと。最初のアクセルから『いつもと違う』と思ってしまいました」
演技終了後、悔しさを押し殺しながら浅田はそう振り返った。金メダルを目標として乗り込んできたが、それももはや風前の灯。今季は圧倒的な強さを誇ってきた浅田に一体何が起こったのか。そこには自身も予想し得ない2つの“想定外”があった。
【確実に狂っていた歯車】
1つ目は団体戦における失敗だ。8日の団体女子SPに浅田は日本代表として出場したが、冒頭のトリプルアクセルで転倒し、スコアは今季ワーストの64.07点。「予想していたよりも緊張してしまい、演技をスタートするときも、自分の気持ちを通常のように持っていけないままスタートしてしまいました」。浅田は原因をそう説明したものの、直前にロシアのユリア・リプニツカヤが72.90点という高得点を出し、地元ファンは熱狂。異様な雰囲気の中で演技をスタートしなければならない不運もあった。
「これだけ緊張したのは前回のバンクーバー五輪以来」(浅田)だったが、立て直しはそれほど難しくないように思われた。4年前の経験に加え、一度その会場の雰囲気を味わってしまえば、対策は十分に立てられるからだ。事実、浅田も「まだ時間はあるのでもう一度気持ちを切り替えて、よく考えます」と前を向いていた。
その後、浅田は10日に日本チームが独自に用意した練習拠点で調整するためアルメニアへ移動。日中は15度近くあるソチとは温度差があり、リンクの室温が想定より低かったため、予定を2日ほど早め、15日に再びソチへ戻ってきた。「そこまですごい調子が上がってきていたわけではないです」と17日の直前会見では珍しく不安を吐露したが、「昨日、今日とすごく良い状態でできています。ソチに入ってくるまでに、しっかりと日本で練習ができているので、それを信じてやっていけば大丈夫なのかなと思っています」と、笑顔を見せた。
しかし、浅田の中で確実に歯車は狂っていた。
【失ってしまった自信、心技体がバラバラに】
2つ目の想定外は、自信を失ってしまったことだ。浅田は「中京大で練習しているときはすごく状態が良くて『いける』と思っていた」。だが、団体戦の演技でその自信が不安と焦りに変わってしまった。
思えば、浅田は団体戦終了後にこんな言葉を漏らしていた。「これだけ練習してきてこういう演技だったということは『原因は何なのか』という感じです」。一度失ってしまった自信を取り戻すのは難しい。ましてや納得いく練習を積み、手応えを感じていたにもかかわらず、うまく演技ができなかったとなれば、気持ちの面で受けるダメージは計り知れない。「アルメニアに入ってからは、毎日完璧に滑りたいという気持ちが強かった。でもそれができずにすごい焦っていました」と、浅田は苦悩していた。
そうした状態で迎えた個人戦のSP。最終滑走の浅田にとって嫌な記憶が蘇る。直前に滑ったソトニコワが素晴らしい演技を披露したことで、地元ファンの大声援が会場内に轟いた。まさに団体戦と同じ状況が作られてしまったのだ。
「団体戦ほど動揺はしなかったんですけど、自分の中で負けてしまったんだと感じています」と、浅田は演技後に振り返った。さらに「自分の気持ちからすべて来るものだと思うので、自分でもっと『いける』と思う気持ちを出さなければいけないと思ったんですけど、それを出そうと思ったのがいつもと違ったんだと思います」と続けた。不安が平常心を奪い、それが体に伝わってしまったことで、心技体がバラバラになる。浅田が陥った状況はそういうことなのだろう。
【FSは全トリプルジャンプに挑戦】
首位のキム・ヨナ(韓国)とは19.41点差。3位のカロリーナ・コストナー(イタリア)とも18.61点差と、目標としていた金メダルはおろか表彰台さえも現実的には難しくなった。「スケート人生の集大成」として位置づけたソチ五輪は、SPで事実上の終焉(しゅうえん)を迎えたと言っても過言ではないだろう。
今季限りでの引退を表明している浅田にとって、今大会が最後の五輪となる。2010年のバンクーバー五輪で銀メダルを獲得。その後の不調を乗り越え、今季はGPシリーズ2勝、ファイナルでも優勝するなど圧倒的な強さを見せていた。佐藤信夫コーチのもと、トリプルアクセルをはじめとしたジャンプだけに頼らず、4年間かけてスケーティングを磨いてきた。今大会は結果を求め、自身の代名詞であるトリプルアクセルを3回から2回に変更。勝負にこだわり、金メダルだけを目指してきた。そんな浅田にとって、SPの時点で早くも希望がついえることになるとは、思いもしなかっただろう。
フリースケーティング(FS)ではアクセルを含む全トリプルジャンプに挑戦する予定だ。これに成功すれば五輪女子初の快挙となる。バンクーバー五輪ではトリプルアクセルを3度成功させて、歴史に名を残した。「明日は明日で自分のやるべきことをしたいと思います」。悔し涙のバンクーバーから続いたソチへの道。笑顔では終われないかもしれないが、ラストダンスで悔いは残してほしくない。
<了>
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)2014/2/20 11:20
ソチ五輪フィギュアスケート女子のショートプログラム(SP)が現地時間19日に行われ、浅田真央(中京大学)はトリプルアクセルで転倒するなど3種類のジャンプすべてにミスが出て、55.51点の16位発進となった。
予想だにしなかった展開に浅田の顔は曇った。「自分の思っているような演技が全然できなくて……気持ちは前に行こうとしていたんですけど、体がついてきませんでした」。直前に滑ったアデリナ・ソトニコワ(ロシア)が出した74.64点というハイスコアに会場が沸き上がる中、最終滑走で登場した浅田は、冒頭のトリプルアクセルで転倒。続くトリプルフリップでは回転不足をとられ、コンビネーションジャンプはダブルループとなるミスを犯してしまった。出来栄え点を表すGOEもジャンプは全てにマイナス評価がついた。
直前の6分間練習ではトリプルアクセルを成功するなど状態は決して悪くなかった。しかし本番を迎えると一変。「何が起こったか分からない」と、ちぐはぐな滑りに終始し、得点の発表を待っている間は放心状態だった。
「リンクに入ってからは落ち着いていたんですけど、滑りだしてからちょっと違うなと。最初のアクセルから『いつもと違う』と思ってしまいました」
演技終了後、悔しさを押し殺しながら浅田はそう振り返った。金メダルを目標として乗り込んできたが、それももはや風前の灯。今季は圧倒的な強さを誇ってきた浅田に一体何が起こったのか。そこには自身も予想し得ない2つの“想定外”があった。
【確実に狂っていた歯車】
1つ目は団体戦における失敗だ。8日の団体女子SPに浅田は日本代表として出場したが、冒頭のトリプルアクセルで転倒し、スコアは今季ワーストの64.07点。「予想していたよりも緊張してしまい、演技をスタートするときも、自分の気持ちを通常のように持っていけないままスタートしてしまいました」。浅田は原因をそう説明したものの、直前にロシアのユリア・リプニツカヤが72.90点という高得点を出し、地元ファンは熱狂。異様な雰囲気の中で演技をスタートしなければならない不運もあった。
「これだけ緊張したのは前回のバンクーバー五輪以来」(浅田)だったが、立て直しはそれほど難しくないように思われた。4年前の経験に加え、一度その会場の雰囲気を味わってしまえば、対策は十分に立てられるからだ。事実、浅田も「まだ時間はあるのでもう一度気持ちを切り替えて、よく考えます」と前を向いていた。
その後、浅田は10日に日本チームが独自に用意した練習拠点で調整するためアルメニアへ移動。日中は15度近くあるソチとは温度差があり、リンクの室温が想定より低かったため、予定を2日ほど早め、15日に再びソチへ戻ってきた。「そこまですごい調子が上がってきていたわけではないです」と17日の直前会見では珍しく不安を吐露したが、「昨日、今日とすごく良い状態でできています。ソチに入ってくるまでに、しっかりと日本で練習ができているので、それを信じてやっていけば大丈夫なのかなと思っています」と、笑顔を見せた。
しかし、浅田の中で確実に歯車は狂っていた。
【失ってしまった自信、心技体がバラバラに】
2つ目の想定外は、自信を失ってしまったことだ。浅田は「中京大で練習しているときはすごく状態が良くて『いける』と思っていた」。だが、団体戦の演技でその自信が不安と焦りに変わってしまった。
思えば、浅田は団体戦終了後にこんな言葉を漏らしていた。「これだけ練習してきてこういう演技だったということは『原因は何なのか』という感じです」。一度失ってしまった自信を取り戻すのは難しい。ましてや納得いく練習を積み、手応えを感じていたにもかかわらず、うまく演技ができなかったとなれば、気持ちの面で受けるダメージは計り知れない。「アルメニアに入ってからは、毎日完璧に滑りたいという気持ちが強かった。でもそれができずにすごい焦っていました」と、浅田は苦悩していた。
そうした状態で迎えた個人戦のSP。最終滑走の浅田にとって嫌な記憶が蘇る。直前に滑ったソトニコワが素晴らしい演技を披露したことで、地元ファンの大声援が会場内に轟いた。まさに団体戦と同じ状況が作られてしまったのだ。
「団体戦ほど動揺はしなかったんですけど、自分の中で負けてしまったんだと感じています」と、浅田は演技後に振り返った。さらに「自分の気持ちからすべて来るものだと思うので、自分でもっと『いける』と思う気持ちを出さなければいけないと思ったんですけど、それを出そうと思ったのがいつもと違ったんだと思います」と続けた。不安が平常心を奪い、それが体に伝わってしまったことで、心技体がバラバラになる。浅田が陥った状況はそういうことなのだろう。
【FSは全トリプルジャンプに挑戦】
首位のキム・ヨナ(韓国)とは19.41点差。3位のカロリーナ・コストナー(イタリア)とも18.61点差と、目標としていた金メダルはおろか表彰台さえも現実的には難しくなった。「スケート人生の集大成」として位置づけたソチ五輪は、SPで事実上の終焉(しゅうえん)を迎えたと言っても過言ではないだろう。
今季限りでの引退を表明している浅田にとって、今大会が最後の五輪となる。2010年のバンクーバー五輪で銀メダルを獲得。その後の不調を乗り越え、今季はGPシリーズ2勝、ファイナルでも優勝するなど圧倒的な強さを見せていた。佐藤信夫コーチのもと、トリプルアクセルをはじめとしたジャンプだけに頼らず、4年間かけてスケーティングを磨いてきた。今大会は結果を求め、自身の代名詞であるトリプルアクセルを3回から2回に変更。勝負にこだわり、金メダルだけを目指してきた。そんな浅田にとって、SPの時点で早くも希望がついえることになるとは、思いもしなかっただろう。
フリースケーティング(FS)ではアクセルを含む全トリプルジャンプに挑戦する予定だ。これに成功すれば五輪女子初の快挙となる。バンクーバー五輪ではトリプルアクセルを3度成功させて、歴史に名を残した。「明日は明日で自分のやるべきことをしたいと思います」。悔し涙のバンクーバーから続いたソチへの道。笑顔では終われないかもしれないが、ラストダンスで悔いは残してほしくない。
<了>
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)2014/2/20 11:20
【浅田真央「体がうまく動かなかった」】
ソチ五輪のフィギュアスケート女子ショートプログラムが現地時間19日(日本時間20日)に行われ、前回バンクーバー五輪銀メダルの浅田真央(中京大)は自己ベストを20点以上下回る55.51点で16位発進となった。
日本勢は鈴木明子(邦和スポーツランド)が60.97点の8位、村上佳菜子(中京大)は55.60点で15位だった。
首位は前回優勝のキム・ヨナ(韓国)で74.92点、2位には地元ロシアのアデリナ・ソトニコワが74.64点で入った。3位はイタリアのカロリーナ・コストナーで74.12点。
以下、演技後の選手コメント。
【浅田真央「滑りだしてからちょっと違うなと」】
自分の思っているような演技が全然できませんでした。(転倒したトリプルアクセルは、途中まで)いつもの練習通りにいきました。ただ、自分の体がうまく動かなかったです。(先生からは)出番前は特に何も言われなくて、あとは自分の今までやってきたことを信じてというのはいつも言います。
――3回転の予定が2回転になったループはタイミングを逸した?
タイミングもそうですし、自分の中の考えも体も全く動かなかったです。滑っていて、いつもの練習のような状態にならなかったです。最初のアクセルから『いつもと違う』と思ってしまいました。
――リンクに入ってからそう思った?
リンクに入ってからは落ち着いていたんですけど、滑りだしてからちょっと違うなと。でも、いかなきゃというのが頭をよぎってしまいました。
――何が違った?
自分の考えと気持ちが違いました。(気持ちはいくと?)そうですね、でも体が付いてきませんでした。
――6分間練習では悪くなかったが
6分間練習のときは団体戦よりは悪くなかったので大丈夫かなと思ったんですけど、自分の演技のときは自分の思うようにできなかったですね。(緊張感は)団体戦のときから感じていて、それを自分の中で克服していくつもりでしたが、できなかったです。自分ではバンクーバー五輪も経験していますし、五輪も2回目なので、五輪を1度経験することで分かることもたくさんあると思うんですけど、それが逆に良い方向に行かなくて、自分の中でうまく解消できていなかったんだと思います。
――うまく気持ちが盛り上がってこなかった?
いつも練習通りにやろうと思っているので、そこまで緊張して体が動かなくなるということ、そしてこれを明日どう乗り切るかというのは自分でも分からないです。(どういった緊張?)体がうまく動かなくなりました。今まではそれでもできていたんですけど、あまり深く考えずに、明日は自分の演技ができるといいなと思います。
――知っているからこそ怖さを感じた?
でもバンクーバー五輪でできているので、自分のコントロールが足りなかったんだと思います。
――団体も今回も直前に滑っているのがロシアの選手だが、その影響は?
団体戦ですごくそれを感じて、今回もそうなるんだなと思って今日は滑りだしたので、団体戦ほど動揺はしなかったんですけど、自分の中で負けてしまったんだと感じています。
――調整については?
ここに来る前は、中京大ですごく良い状態で、『いけるな』と思ったんですけど、団体戦を滑ってみて、『これで大丈夫かな』という気持ちになって、アルメニアでも練習はしていたんですけど、そこまで調子が上がらないまま、ここに入ってきて……。ここに入ってきてからは調子が良かったんですけど、なかなか自分で『いける』という強い気持ちを持たなくてはいけないと思いすぎたのかもしれません。
――バンクーバー五輪もそれほど調子は悪くなくて本番ではできた。今回は何が違った?
自分の気持ちからすべて来るものだと思うので、自分でもっと『いける』と思う気持ちを出さなければいけないと思ったんですけど、それを出そうと思ったのがいつもと違ったんだと思います。
――フリーに向けてどう立て直す?
明日は明日で自分のやるべきことをしたいと思います。
(スポーツナビ)2014/2/20 5:59
ソチ五輪のフィギュアスケート女子ショートプログラムが現地時間19日(日本時間20日)に行われ、前回バンクーバー五輪銀メダルの浅田真央(中京大)は自己ベストを20点以上下回る55.51点で16位発進となった。
日本勢は鈴木明子(邦和スポーツランド)が60.97点の8位、村上佳菜子(中京大)は55.60点で15位だった。
首位は前回優勝のキム・ヨナ(韓国)で74.92点、2位には地元ロシアのアデリナ・ソトニコワが74.64点で入った。3位はイタリアのカロリーナ・コストナーで74.12点。
以下、演技後の選手コメント。
【浅田真央「滑りだしてからちょっと違うなと」】
自分の思っているような演技が全然できませんでした。(転倒したトリプルアクセルは、途中まで)いつもの練習通りにいきました。ただ、自分の体がうまく動かなかったです。(先生からは)出番前は特に何も言われなくて、あとは自分の今までやってきたことを信じてというのはいつも言います。
――3回転の予定が2回転になったループはタイミングを逸した?
タイミングもそうですし、自分の中の考えも体も全く動かなかったです。滑っていて、いつもの練習のような状態にならなかったです。最初のアクセルから『いつもと違う』と思ってしまいました。
――リンクに入ってからそう思った?
リンクに入ってからは落ち着いていたんですけど、滑りだしてからちょっと違うなと。でも、いかなきゃというのが頭をよぎってしまいました。
――何が違った?
自分の考えと気持ちが違いました。(気持ちはいくと?)そうですね、でも体が付いてきませんでした。
――6分間練習では悪くなかったが
6分間練習のときは団体戦よりは悪くなかったので大丈夫かなと思ったんですけど、自分の演技のときは自分の思うようにできなかったですね。(緊張感は)団体戦のときから感じていて、それを自分の中で克服していくつもりでしたが、できなかったです。自分ではバンクーバー五輪も経験していますし、五輪も2回目なので、五輪を1度経験することで分かることもたくさんあると思うんですけど、それが逆に良い方向に行かなくて、自分の中でうまく解消できていなかったんだと思います。
――うまく気持ちが盛り上がってこなかった?
いつも練習通りにやろうと思っているので、そこまで緊張して体が動かなくなるということ、そしてこれを明日どう乗り切るかというのは自分でも分からないです。(どういった緊張?)体がうまく動かなくなりました。今まではそれでもできていたんですけど、あまり深く考えずに、明日は自分の演技ができるといいなと思います。
――知っているからこそ怖さを感じた?
でもバンクーバー五輪でできているので、自分のコントロールが足りなかったんだと思います。
――団体も今回も直前に滑っているのがロシアの選手だが、その影響は?
団体戦ですごくそれを感じて、今回もそうなるんだなと思って今日は滑りだしたので、団体戦ほど動揺はしなかったんですけど、自分の中で負けてしまったんだと感じています。
――調整については?
ここに来る前は、中京大ですごく良い状態で、『いけるな』と思ったんですけど、団体戦を滑ってみて、『これで大丈夫かな』という気持ちになって、アルメニアでも練習はしていたんですけど、そこまで調子が上がらないまま、ここに入ってきて……。ここに入ってきてからは調子が良かったんですけど、なかなか自分で『いける』という強い気持ちを持たなくてはいけないと思いすぎたのかもしれません。
――バンクーバー五輪もそれほど調子は悪くなくて本番ではできた。今回は何が違った?
自分の気持ちからすべて来るものだと思うので、自分でもっと『いける』と思う気持ちを出さなければいけないと思ったんですけど、それを出そうと思ったのがいつもと違ったんだと思います。
――フリーに向けてどう立て直す?
明日は明日で自分のやるべきことをしたいと思います。
(スポーツナビ)2014/2/20 5:59