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フィギュアスケーターの浅田真央さんを応援するブログ
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【3つのジャンプをすべてミス】

 ソチ五輪フィギュアスケート女子のショートプログラム(SP)が現地時間19日に行われ、浅田真央(中京大学)はトリプルアクセルで転倒するなど3種類のジャンプすべてにミスが出て、55.51点の16位発進となった。

 予想だにしなかった展開に浅田の顔は曇った。「自分の思っているような演技が全然できなくて……気持ちは前に行こうとしていたんですけど、体がついてきませんでした」。直前に滑ったアデリナ・ソトニコワ(ロシア)が出した74.64点というハイスコアに会場が沸き上がる中、最終滑走で登場した浅田は、冒頭のトリプルアクセルで転倒。続くトリプルフリップでは回転不足をとられ、コンビネーションジャンプはダブルループとなるミスを犯してしまった。出来栄え点を表すGOEもジャンプは全てにマイナス評価がついた。

 直前の6分間練習ではトリプルアクセルを成功するなど状態は決して悪くなかった。しかし本番を迎えると一変。「何が起こったか分からない」と、ちぐはぐな滑りに終始し、得点の発表を待っている間は放心状態だった。

「リンクに入ってからは落ち着いていたんですけど、滑りだしてからちょっと違うなと。最初のアクセルから『いつもと違う』と思ってしまいました」

 演技終了後、悔しさを押し殺しながら浅田はそう振り返った。金メダルを目標として乗り込んできたが、それももはや風前の灯。今季は圧倒的な強さを誇ってきた浅田に一体何が起こったのか。そこには自身も予想し得ない2つの“想定外”があった。

【確実に狂っていた歯車】

 1つ目は団体戦における失敗だ。8日の団体女子SPに浅田は日本代表として出場したが、冒頭のトリプルアクセルで転倒し、スコアは今季ワーストの64.07点。「予想していたよりも緊張してしまい、演技をスタートするときも、自分の気持ちを通常のように持っていけないままスタートしてしまいました」。浅田は原因をそう説明したものの、直前にロシアのユリア・リプニツカヤが72.90点という高得点を出し、地元ファンは熱狂。異様な雰囲気の中で演技をスタートしなければならない不運もあった。

「これだけ緊張したのは前回のバンクーバー五輪以来」(浅田)だったが、立て直しはそれほど難しくないように思われた。4年前の経験に加え、一度その会場の雰囲気を味わってしまえば、対策は十分に立てられるからだ。事実、浅田も「まだ時間はあるのでもう一度気持ちを切り替えて、よく考えます」と前を向いていた。

 その後、浅田は10日に日本チームが独自に用意した練習拠点で調整するためアルメニアへ移動。日中は15度近くあるソチとは温度差があり、リンクの室温が想定より低かったため、予定を2日ほど早め、15日に再びソチへ戻ってきた。「そこまですごい調子が上がってきていたわけではないです」と17日の直前会見では珍しく不安を吐露したが、「昨日、今日とすごく良い状態でできています。ソチに入ってくるまでに、しっかりと日本で練習ができているので、それを信じてやっていけば大丈夫なのかなと思っています」と、笑顔を見せた。

 しかし、浅田の中で確実に歯車は狂っていた。

【失ってしまった自信、心技体がバラバラに】

 2つ目の想定外は、自信を失ってしまったことだ。浅田は「中京大で練習しているときはすごく状態が良くて『いける』と思っていた」。だが、団体戦の演技でその自信が不安と焦りに変わってしまった。

 思えば、浅田は団体戦終了後にこんな言葉を漏らしていた。「これだけ練習してきてこういう演技だったということは『原因は何なのか』という感じです」。一度失ってしまった自信を取り戻すのは難しい。ましてや納得いく練習を積み、手応えを感じていたにもかかわらず、うまく演技ができなかったとなれば、気持ちの面で受けるダメージは計り知れない。「アルメニアに入ってからは、毎日完璧に滑りたいという気持ちが強かった。でもそれができずにすごい焦っていました」と、浅田は苦悩していた。

 そうした状態で迎えた個人戦のSP。最終滑走の浅田にとって嫌な記憶が蘇る。直前に滑ったソトニコワが素晴らしい演技を披露したことで、地元ファンの大声援が会場内に轟いた。まさに団体戦と同じ状況が作られてしまったのだ。

「団体戦ほど動揺はしなかったんですけど、自分の中で負けてしまったんだと感じています」と、浅田は演技後に振り返った。さらに「自分の気持ちからすべて来るものだと思うので、自分でもっと『いける』と思う気持ちを出さなければいけないと思ったんですけど、それを出そうと思ったのがいつもと違ったんだと思います」と続けた。不安が平常心を奪い、それが体に伝わってしまったことで、心技体がバラバラになる。浅田が陥った状況はそういうことなのだろう。

【FSは全トリプルジャンプに挑戦】

 首位のキム・ヨナ(韓国)とは19.41点差。3位のカロリーナ・コストナー(イタリア)とも18.61点差と、目標としていた金メダルはおろか表彰台さえも現実的には難しくなった。「スケート人生の集大成」として位置づけたソチ五輪は、SPで事実上の終焉(しゅうえん)を迎えたと言っても過言ではないだろう。

 今季限りでの引退を表明している浅田にとって、今大会が最後の五輪となる。2010年のバンクーバー五輪で銀メダルを獲得。その後の不調を乗り越え、今季はGPシリーズ2勝、ファイナルでも優勝するなど圧倒的な強さを見せていた。佐藤信夫コーチのもと、トリプルアクセルをはじめとしたジャンプだけに頼らず、4年間かけてスケーティングを磨いてきた。今大会は結果を求め、自身の代名詞であるトリプルアクセルを3回から2回に変更。勝負にこだわり、金メダルだけを目指してきた。そんな浅田にとって、SPの時点で早くも希望がついえることになるとは、思いもしなかっただろう。

 フリースケーティング(FS)ではアクセルを含む全トリプルジャンプに挑戦する予定だ。これに成功すれば五輪女子初の快挙となる。バンクーバー五輪ではトリプルアクセルを3度成功させて、歴史に名を残した。「明日は明日で自分のやるべきことをしたいと思います」。悔し涙のバンクーバーから続いたソチへの道。笑顔では終われないかもしれないが、ラストダンスで悔いは残してほしくない。

<了>

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)2014/2/20 11:20
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